将棋序盤好きの小言

将棋の定跡や自戦感想戦を載せます。

横歩取り勇気流~85飛-25飛型④(先手急戦策25手目83歩)

どうも、タネタです。

横歩取り勇気流の序盤を勉強していく記事です。

 

横歩取りの出だしで17手目6八玉として先手が勇気流を明示した局面から

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(17手目 6八玉まで)

 

後手は△8五飛~△2五飛~△8五飛として

先手に2筋の歩を打たせる対策の序盤について見ています。

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(22手目 8五飛まで)

この局面から先手は▲3七桂として速攻の気配を漂わせ、

△8二飛と大人しく飛車を撤退するのが定跡の進行になっています。

仮に、この△8二飛を怠った場合の先手の指し手は

前回までの記事にまとめましたのでご参考ください。

横歩取り勇気流~85飛-25飛型②(後手の変化球24手目44歩) - 将棋序盤好きの小言

横歩取り勇気流~85飛-25飛型③(後手の変化球24手目42玉) - 将棋序盤好きの小言

 

今回の記事では△8二飛に

▲8三歩として、先手から勢いよく襲い掛かる順を見ていきます。

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(25手目 8三歩まで)

 

▲8三歩からの急戦策はプロの実戦で2局(2017年10月筆者確認時点)あり、

結果は先手2勝です。

私の棋力でソフトで解析したところ、

しばらく先手の攻めが続くものの先手にもかなり研究が必要で

先手最善の頑張りでも評価値は-250~+150あたりの互角

攻めを間違えるとすぐに評価値が-500ほどと

先手悪くなりやすいというのが現在の感想で、

プロの実戦でも途中は後手良しの局面があり

そこから逆転して先手勝ちという将棋でしたので

▲8三歩から攻勢を取りに行かずに、

▲3八銀から攻めを作っていくのが作戦としてはベターなように感じています。

 

そのためこの記事でも▲8三歩からの急戦策について

突っ込んだ部分の変化などにはあまり触れずに

実際の進行を基に少し変化にも触れる程度になります。

 

▲8三歩の急戦を採用されたい方は

第75期順位戦C級2組7回戦(11/24)長岡裕也五段-上村亘四段戦

の先手の攻めは研究のし甲斐のある棋譜のように見えましたので、

ぜひ一度ご覧いただくことをお勧めします。

 

それでは前置きが長くなりましたが、定跡の進行を確認していきましょう。

▲8三歩△同飛▲8四歩△8二飛として後手の飛車を一度止めてからの

▲7七桂が狙いの攻めです。

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(29手目 7七桂まで)

飛車筋を止めずに▲7七桂は

△8七歩で角を取られてしまいますので、左桂を活用するためには

飛車筋を止めるのは必要手だったのですね。

 

ここから

第76期順位戦B級1組2回戦谷川-斎藤慎戦では

△8七歩▲同金の交換を入れてから△4四歩と受けました。

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(32手目 4四歩まで)

 

先手は▲6五桂と跳ねだしていきますが、

△8四飛が金取りになるので▲8六歩と受けることになり

△4三金で

▲5三桂成を受けつつ、3四の飛車取りで受けることができました。

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(36手目 4三金まで)

 

ここで飛車取りを受けるなら▲3五飛なのですが

△3四歩から飛車を追った後に△6四歩で桂馬を取り切れれば後手優勢です。

そこでここでは▲3五歩として飛車にひもを付け、

△3四金▲同歩で角取りになることを主張するのが最善のようです。

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(37手目 3五歩まで)

この後、後手が△5二金として受けた手の評価が悪く

評価値はしばらく先手有利+300ほどとなりました。

 

替えて△3四金▲同歩△2四角が感想戦や検討では最善だとなったようで

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(40手目 2四角まで)

このあとの展開として、△5四飛と回る、

5三桂成で歩が切れたら△5六歩が厳しい

など、先手は攻めると反動が厳しく

先手後手ともに難しい将棋になりそうです。

 

次に別の実戦として

第75期順位戦C級2組7回戦長岡-上村戦の進行を見ていきます。

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(再掲 29手目 7七桂)

先ほどはここから

△8七歩▲同金を入れて△4四歩でしたが

この実戦では△4二角でした。

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(30手目 4二角まで)

ここから▲6五桂△3三歩と進んで

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(32手目 3三歩まで)

▲6五桂が5三成と1一角成の両狙いですが、

さきほどの4二角が5三をカバーしつつ3三歩で角道も止まるので

いったんは大丈夫です。

この後▲4五桂△6二銀▲3五歩と進んで

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(35手目 3五歩まで)

 

いつでも△3四歩と飛車を取る手はありますが、

1一角成との交換になります。

先手は香を持てば▲5六香が楽しみで攻めが繋がりそうです。

そこで後手は飛車を取りを楽しみに我慢を重ねます。

35手目▲3五歩の次の狙いは

▲5三桂左成△同銀▲同右桂成△同角▲5四飛△4二銀▲3四歩で

▲3五歩を活かして攻められそうです。

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(参考図 43手目 3四歩まで 評価値52歩;-200、64桂;-100 深さ20)

 

35手目の▲3五歩の局面に戻りまして

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(再掲 35手目 3五歩)

後手は△2二歩としていよいよ飛車取りを見せますが

以下▲2四飛△2三歩▲2六飛△8四飛▲5六飛と進みました。

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(41手目 5六飛まで)

先手の▲3五歩は飛車を取られたときに同歩と取り返すような手での攻めを見つつ、

2四→2六→5六と活用する順も見ていた

飛車を取られても取られなくても活用する一手だったようです。

 

しかしついに8四の歩を取られてしまい、

現局面は先手歩切れになっていますので

先手はこれ以上の小技を掛けることが難しいです。

 

以下△5二金▲6六角△8五飛と進み

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(44手目 8五飛)

先手の攻めが忙しい局面で

以降難しい部分もありましたがやや後手に分があるような進行でした。

 

現状、実戦ではこの2局のみで

まだまだ定跡の整備が進んでいないことと思いますが

一直線の変化や深い研究が為されやすいところだと思いますので

自信のある方は自分で深く研究して採用されても面白いかと思います。

 

筆者の現段階での認識は

▲8三歩は無理攻めではないものの後手に受けられて容易でない。

先手を持って指すなら、3八銀以降の攻め筋を研究したい。

という感じです。

▲8三歩の急戦策で面白い攻め筋があるよーなどあれば

ご指摘いただけますと幸いです。

 

以上で今回の記事を終わります。

次回は85飛-25飛の最後の記事になると思いますが

▲3八銀としまって満を持して先手が攻めかかる展開を見ていきます。