将棋序盤好きの小言

将棋の定跡や自戦感想戦を載せます。

横歩取り勇気流~52玉76飛①(実戦の進行と課題局面)

どうも、タネタです。

横歩取り勇気流の序盤をプロの実戦譜から勉強していく記事です。

 

前回までで後手の

①2二銀8二飛型

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②8五飛-2五飛型

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の序盤を見てきました。

 

どちらも先手の攻め、後手の受けという展開になりやすく

先手は攻めの工夫を、後手はしっかり受けて反撃を考える楽しみのある展開のようでした。

 

今回からは、後手も攻めてくる展開について見ていこうと思います。

今までのような先手が攻めに専念できる展開ではないので

先手もきっちりと事前準備が必要になることと思います。

気合を入れて頑張っていきます。(*´▽`*)

 

まずは勇気流の基本図からの進行を見ていきます。

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(17手目 6八玉まで)

 

この局面から△5二玉▲3六歩△7六飛と進みます。

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(20手目 7六飛まで)

 

この後手の形は、勇気流の歳の離れた双子の兄(?)である青野流に対して

最近もっとも多く指されている対策と同じ形です。

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(参考図 20手目 7六飛まで)

 

参考図では、後手から△8八角成が来ると将棋が終わってしまうので、

△7七角や△7七桂とする将棋になっていきます。

 

一方、勇気流の形では7八の金に玉のヒモがついているので、

△8八角成からの先手になっていないため、

21手目に▲3七桂と攻めの手を指せるのは先手が得した気分ですね。

(※だから勇気流の方が良いというわけではありません。)

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(21手目 3七桂まで)

 

少し蛇足になりますが、単の7六飛についても少し見ておきましょう。

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(参考図 18手目 7六飛)

ここで実戦では▲3六歩が指されています。

歩の損得はなくなりますが、3七桂から4五桂の速攻を見た本筋の手ですね。

 

ただし、後手に8六飛と戻られて後手も十分に攻撃力のある形になりますので

これはこれで有力な展開となりそうです。

 

筆者はこの形で攻め合いに持ち込もうという後手の主張を否定したので

19手目に▲8四飛の展開を検討したことがあります。

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(参考図 19手目 8四飛まで)

パッと見は王手飛車をかけてみたいところですが

△8八角成▲同銀△9五角には▲7七歩の飛車取りがお返しに効きます。

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(参考図 23手目 7七歩まで)

ここから飛車の取り合いは、後手の角の働きが悪く、▲2四飛の筋で攻めの目標にされそうです。

後手陣は5三と6三の歩が浮いていて、居玉なので飛車を打つ場所にも苦労します。

かといって、△2六飛と逃げるのは、1五角で王手飛車をかけてもいいですし、

▲8一飛成△2九飛成▲6五桂としておいて

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(参考図 27手目 6五桂まで)

先手の攻めの方が速そうですね。

もちろん変化の余地はかなりあると思いますが

5二玉と備えずに横歩を取りに来たことを後悔させていきたいなー

というのが筆者の狙いです。

 

さて、本譜の進行に戻りましょう。

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(再掲 21手目 3七桂まで)

 

ここで△8六飛と変化する可能性もなくはない手です。

ただ、▲3八銀に△7二銀(悪手)などとすると

▲4五桂△8八角成▲同銀△3三歩▲5三桂成△同玉▲7五角で

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(参考図 31手目 7五角まで)

飛車取りと▲5四飛~▲5三角成が厳しく先手勝勢に近そうです。

8六飛で後手にすぐの攻めがあるわけでもなく、

先手に一気の攻めを目指される可能性もあるので、

△7四飛から交換を迫る方が後手として面白い手と言えそうです。

 

22手目から△7四飛▲同飛(3五飛は角交換から△2六角)△同歩▲3八銀

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(25手目 3八銀まで)

この▲3八銀は個人的には指しておきたい手なのですが、

羽生先生曰く、「3八銀とかやってる将棋じゃなかったのかもしれませんね」

として、①7七桂、②8四歩、③2四歩といった代替手が感想戦で検討されたそうです。

しかし、どれも先手にとって冴えないようで、以降も実戦譜は▲3八銀が続いています。

以降の変化でどうしても先手苦しいようなら、ここから変化していかざるを得ないのかもしれませんね。

 

本譜は▲3八銀に対して△2八飛が村山七段の用意の手で、

研究会で経験済みの局面だったそうです。

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(26手目 2八飛まで)

ここで一号局である羽生-村山戦(2017/7/14竜王戦決勝トーナメント)では

シンプルに▲2七歩だったのですが、

第二号局広瀬-稲葉戦(2017/7/19順位戦A級)では

▲8二歩△同銀の交換を入れてから▲2七歩でした。

 

この将棋は後に角交換になりますので、

▲5五角の筋が厳しくなるようにしておくのが大事な利かしで

このタイミングを逃すと叩きが入らない可能性が高いので、覚えておきたい一手ですね。

 

ここからは一直線に進みます。

27手目▲8二歩から△8二同銀

▲2七歩△2六歩▲3九金△2七歩成▲2八金△同と▲4九銀

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(35手目 4九銀まで)

 

この局面で後手に有力な手が①3九と、②1九との2つあります。

①3九とはと金を玉側へ活用する自然な厳しい攻めに見えますね。

まずはこちらを見ていきましょう。

 

△3九と▲5八銀△3八と▲4五桂△8八角成▲同銀△4八と▲6九銀で

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(43手目 6九銀まで)

後手はジリジリとと金を活用し、先手は手に乗って右の銀桂を活用できています。

この局面で後手がどのように指すかがこの将棋の勝敗につながってきそうです。

実戦の進行は△8七歩で、

これに1)▲8七同銀は△8八歩でi)▲7七桂は△5九角から詰み、ii)▲8八同金は△5九角~△5八とが厳しく、iii)▲7九玉ならすぐにはつぶれないが桂損。

2)▲8七同金は△8六歩が厳しく、a)▲8六同金は△5九角で王手金取り、b)▲7七金は△5九角~△5八と、c)▲8五飛には△3七角と受けて後手がやや指せるか。

3)▲7七銀と躱すと先手玉が瞬間すごく狭い形でこわいところ。

 

本譜はこの後の△8八金が疑問で金を渡したことによって後手玉に寄せが生じてしまったようです。

また、△8七歩と打ったために▲8五飛と打たれたときに8筋に歩が打てないのも

先手の指し手に得を与えているようで、最善が難しい局面ですね。

 

△8七歩に替えて、△3三桂も有力な変化と見られていたようですが、

広瀬八段の予定は▲3三桂成△同金▲5五角△7六桂▲7七玉△4四角▲同角△同歩▲2一飛

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(参考図 53手目 2一飛まで)

で先手やれそうという評価だったそうです。

 

43手目▲6九銀から後手がどう攻めてくるのか、が今後の検討課題となっているのが現状だと思います。

このあたりをもう少しだけ、次回の記事で検討してみたいと思います。

 

話を少し戻しまして、36手目の分岐②1九との進行も見てみましょう。

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(再掲 35手目 4九銀まで)

ここで△1九とと、そっぽにいっても香車をもつのが阿久津八段の工夫です。

王将戦二次予選松尾-阿久津戦(2017/8/11)

ここから▲4五桂△8八角成▲同銀△4四香と進みました。

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(40手目 4四香まで)

7六桂の筋があるので、先手は桂馬を簡単には渡したくありません。

また、現状では4七香成とされるのも嫌なので、指されてみると嫌味な香車です。

 

本譜はここで桂取りを受けずに▲7七銀と進みました。

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(41手目 7七銀まで)

ここで△4五香が自然ですが、

▲7七銀で受けられたところばかりなので▲5五角の両取りが返ってきます。

この局面では手が広く、後手にさらなる工夫のし甲斐があるように見えます。

このあたりの指し手をまた、後日別記事にて検討していきたいと思います。

 

本譜は△4二銀として▲5三桂成の筋を先受けしました。

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(42手目 4二銀まで)

▲5五角の筋を受けておいて、桂馬を取りますよー

といくものとばかり思っていましたが、

▲5三桂成△同玉の形も嫌なところなので、じっと自陣に手を入れる

焦らない手というのは、いかにも強そうな人の指し手っぽいですね!

 

さて、この局面、松尾八段の第一感は▲5八銀だったそうです。

やはり△4五香には▲5五角が残っていますし、4七にヒモ付けしたので先手の状況が良くなっています。

しかし、▲5八銀に△7三角とされると、

▲4六歩と桂馬を支える手を消され、▲5五角の攻めも先受けされて

今度は後手の条件がかなり良くなっているように見えます。

そこで、実戦は仕方なく▲2二歩と攻め込んだそうです。

以下は

△2二同金▲5三桂成△同銀▲3一角

△3二金▲5三角成△同玉▲4一飛

△5二玉▲2一飛成△3一歩

▲2四桂△4二金▲3一龍△4一金打と進みました。

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(58手目 4一金打まで)

ここで手番が後手に渡り、後手待望の反撃のチャンスが来たのですが

△4七香成には▲4四歩、(本譜)△5六歩には▲5五香の反撃があるため

バランスが取れている局面と言えそうです。

 

本譜は最後に1九のと金が働いて先手玉が詰む展開となりましたが、

58手目以降もしばらく難しい展開が続いていたようです。

受けなしに見える局面から後手の絶好手で自玉を安全にし、

先手玉を即詰みに打ち取った本譜は阿久津八段の強さが光る一局だと思います。

ぜひ一度並べてみてほしい棋譜です。

 

今回の記事はここまでとします。

次回以降は36手目△3九との進行での課題局面43手目6九銀の局面を

見ていく予定です。