横歩取り勇気流~85飛-25飛型⑤(27手目84歩の進行)
どうも、タネタです。
横歩取り勇気流の序盤をプロの実戦譜から勉強していく記事です。
前回の記事で先手の急戦策25手目▲8三歩の展開について見ていきました。
その記事でも書きましたが、私はこの作戦を採用する必要性が薄いと考えています。
なぜならば今回紹介していく進行で先手が無理なく先攻できると思っているからです。
今回紹介する棋譜3局は先手で勇気流を指すのであれば
一度は目を通しておきたい棋譜だと思ってます!
・2017/03/23 竜王戦1組 豊島-三浦(千日手になった対局)
・2017/07/31 竜王戦決勝トーナメント 羽生-稲葉
それでは進行を確認していきましょう。
勇気流基本図から24手目8二飛までの進んだ局面で
(24手目 8二飛まで)
この局面を評価して見ましょう。
後手は2,3筋と8筋の歩が切れていて、初形から32金33角の2手を指した形です。
先手は8筋の歩が切れていて1歩得し、初形から78金68玉37桂の3手指した形です。
先手は2筋に攻めで歩を使うことはできませんが、歩得と手得ができています。
先手の陣形は、とりあえず38銀の一手は指しておきたいところですね。
後手の陣形は立ち遅れていますので指したい手は
4二玉や4四歩、5二金~4三金右、6二銀や7二銀など
たくさんあります。
しかし一手や二手でしっかりした形を目指すのが難しく、
後手の指し手は簡単ではないようです。
ということで、
先手は焦らずに一度は3八銀と陣形を整備しておきましょう。
(25手目 3八銀まで)
この局面で4四歩は指されたことがあります。
勇気流(68玉型)では4筋の歩を突いても玉のコビンではないので
青野流(58玉型)に比べて、4六歩~4五歩と攻めやすいです。
そこで4六歩と突いていき、
以下△8六歩▲8四歩△8七歩成▲同金
△8四飛▲8五歩△2二角▲4五歩
(35手目 4五歩まで)
と仕掛けて
△3三桂▲4四飛△4四同飛▲同歩
△6八玉▲4六飛△4二銀▲3五歩
△2四飛▲2七歩△3四歩▲2六飛
△1四飛▲3六飛△3五歩▲同飛△2三金
(52手目 2三金まで)
▲2五桂などが厳しく先手優勢そうです。
この進行は一例で変化の余地はあるかと思いますが
先手は4筋に争点があると飛車角桂で攻めやすくなっていそうです。
再び25手目3八銀の局面に戻りまして
(再掲25手目 3八銀まで)
▲4五桂の攻めが見えているので△4二玉も自然に見えますね。
そこで▲8四歩が豊島八段の工夫です。
(27手目 8四歩まで)
8四の歩は飛車の紐しかついていない不安定な歩なので
後手としては△2二銀~3三銀(2三銀)として飛車を動かしに行くのが
自然な進行に見えます。
・2017/03/23 竜王戦1組 豊島-三浦戦では
28手目2二銀に、先手は▲4五桂と跳ねだしていき、
△8八角成▲同銀△3三桂と進みました。
(32手目 3三桂まで)
この3三桂に替えて3三歩の方が堅く、
ソフトの評価値で比べてもわずかに3三歩を推奨しているようですが、
(変化図 32手目 3三歩)
▲2四飛△2三歩(後の▲2二飛成~▲8三銀などが嫌味)
▲2五飛と進みます。
(参考図 35手目 2五飛まで)
△8四飛と歩を回収すると、
▲5三桂成△同玉▲7五角の王手飛車があり、
一例として
△6四飛▲同角△同歩▲4一飛
△5二玉▲2一飛成△3一金▲同龍△同銀▲2三飛成
(参考図 49手目 2三飛成まで)
と2筋を突破できれば先手優勢と言えそうです。
△8四飛と歩を払うのは危なかったので別の手を選択することになりますが、
先手は機を見て▲5三桂成~▲8五飛と8筋を逆襲する狙いや
8三に駒を打ち込む攻めや▲7七桂から2枚桂など
攻め筋がたくさんありますので、先手が楽しく指せそうです。
本譜に戻りまして、32手目△3三桂を見ていきます。
(再掲 32手目 3三桂まで)
▲3三同桂成△同銀▲3五飛△4四銀
(替えて△8四飛は▲6六角~▲4五桂が怖いところ)
▲8五飛△7二銀▲8三桂
(39手目 8三桂まで)
露骨に桂馬をねじ込んで、先手が8筋からポイントを稼ぐことができ
先手が有利になっているかと思います。
後手の方針として、△2二銀~△3三銀としていくのは
8四の歩を払えるわけではなく、手順に▲8五飛からの8筋逆襲があるので
2手掛ける価値が薄いようでした。
そこで27手目▲8四歩に対して△7二銀と立ったのが稲葉八段の工夫です。
(28手目 7二銀まで)
・2017/07/31 竜王戦決勝トーナメント 羽生-稲葉戦
この局面で▲4五桂が成立するかどうかが難しいところなのですが
検討された順としましては
▲4五桂△8八角成▲同銀△3三歩
▲2四飛△2三歩▲2五飛△4四歩
▲5三桂成△同玉▲8五飛
のように進行したときに
(参考図 39手目 8五飛まで)
先手からの攻めが続くかどうか難しいところのようです。
本譜は▲7七桂として桂馬の活用を図りました。
角道が止まった瞬間ですので
△4四歩で桂跳ねを防ぐのも自然なところです。
(30手目 4四歩まで)
この局面で先手の指し手がいくつかあり、難しいところなのですが
実戦の進行は▲9六歩でした。
喜び勇んで△8四飛は▲4五桂で角が取られてしまいそうです。
また、△4三金もある手に見えますが
▲3五飛△8四飛▲8五飛△同飛▲同桂で
(参考図 37手目 8五桂まで)
この局面で形勢に大差はついていないのですが
金が三段目にいて飛車交換になるのは、
飛車に対する陣形差の分だけ後手が戦いにくそうです。
一手一手が難しいところになっていますが
稲葉八段の選択は△8六歩でした。
(32手目 8六歩まで)
ここから実戦は
▲9七角△4三金▲3五飛△8四飛
▲8五歩△8二飛▲8六角△7四歩▲7五歩
と進みました。
(41手目 7五歩まで)
途中、△8二飛を替えて△7四飛も有力で
以下①▲7五歩△5四飛▲2五飛△3二銀▲8六角
(参考図 43手目 8六角まで)
先手は2筋に歩が使えると攻められそうなのですが、2八に歩がいてできません。
後手も飛車が少し窮屈で威張れるものではありません。
難しい将棋になりそうです。
△7四飛に
②▲8六角△7六飛▲8七金△7四飛▲4六歩
(参考図 43手目 4六歩まで)
攻めは先ほどの変化よりもありそうな形ですが
8七の金の形になりますので、守りに不安はあります。
これも難しいですね。
さて本譜の進行に戻りましょう。
(再掲 41手目 7五歩まで)
ここで後手の対応は①7三銀②6四歩③7五同歩などがあります。
①7三銀は7四歩からの継続で駒を活用していく手ですが
▲6五桂△6四銀▲7四歩と進むと先手の駒が捌けてきます。(形勢は互角)
②6四歩は桂馬を取ろうという狙いですが
▲7四歩△7六歩▲6四角△7七歩成▲同金△7三歩▲4六角で
後手の指し手が難しかったようです。(先手有利?)
(参考図 49手目 4六角まで)
③7五同歩は▲同飛で
7七桂の頭も守り、歩越し飛車の悪形を解消できるので
先手気分の良い展開ですね。(互角~先手指しやすい)
本譜は③7五歩の進行で以降ジワジワと陣形を進めていく展開になりました。
このように27手目▲8四歩の展開は、△8四飛と歩を払うことが難しく
85飛と回るような展開を含みにしつつ指していくことになりそうです。
もう一つの実戦例を見ていきましょう。
勇気先生の勇気流は持久戦調になった場合に▲4六歩と突いていることが多いです。
本譜も27手目は8四歩ではなく、4六歩を選択されていました。
(27手目 4六歩まで)
この4六歩がなんなのかの説明は、
現在執筆中とウワサの勇気先生による勇気流解説本に
おそらく記載されるのではないかと期待していますので
ここでとやかく言うのはやめます。
実戦は陣形整備として△5二金、
そこで▲8四歩と時間差でいきました。
(29手目 8四歩まで)
後手は陣形が不安定で角が向き合っていますので、
角交換から6一角や7一角の筋があり、7一の銀を動かせません。
△4四歩は▲4五歩の仕掛けもありますし、
6六角で8四の歩を安定させてから8八銀として陣形を良くしていく手もあり得ます。
2二銀から2三銀などを目指しますが、
本譜△2二銀に▲3三飛成!が成立します。
(31手目 3三飛成まで)
△同銀▲8三角で
(33手目 8三角まで)
次の▲6一角成を許すわけにはいきません。
△7二銀には▲同角成△同飛▲8三歩成で先手有利は間違いないですね。
本譜は
△5一金▲6六角
(35手目 6六角まで)
次に▲4七角成~▲8三歩成が分かりやすい攻めです。
後手が△2四飛と攻防に飛車を打っても、
▲4七角成△2八飛成▲8三歩成で先手良さそうです。
かといって、▲4七角成に△8四飛上▲同角△同飛▲8八銀の進行も
先手陣が形が良く、馬も手厚いですね。
持ち駒の飛車も攻め駒として働きそうな形なので先手優勢だと思います。
もどって、28手目△5二金が失敗だったかもしれません。
では28手目は何を指せばよかったのか、
というのを次回の記事で考えてみたいと思います。
(再掲 27手目 4六歩まで)
記事が長くなってきましたので今回はここまでにします。