将棋序盤好きの小言

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横歩取り勇気流~22銀82飛型③(21手目35飛)

どうも、タネタです。

横歩取り勇気流の序盤をプロの棋譜から勉強していく記事です。

 

前回の記事では

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この局面で▲3七桂と跳ねる手を見ていきました。

 

今回の記事ではプロの実戦例が最も多い▲3五飛の変化を見ていきます。

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(21手目35飛まで)

この局面で後手の自然な手は△4一玉または△4二玉です。

それ以外の手では▲3七桂~▲4五桂と跳ねてくる手が厳しくなります。

先手の飛車が3筋にいる場合、32の金に紐がついている形でなければ、先手は桂馬を跳ねるだけで快調に攻めることができてしまいます。

また、この局面で△2三銀と金銀の連結をよくする手もすぐ悪くなる手ではないのですが、33の地点が薄くなってしまうので、場合によっては先手が一気に攻めることができるかもしれません。

攻めの例として▲3五飛△2三銀のあと、▲3七桂△6二銀(悪手)などとすると、▲8四歩△同飛▲3三角成△同桂▲6六角として

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以下△8九飛成と飛車取りを逃げると▲3三角成の攻めが厳しく△6二銀の形が壁になっていて後手玉がすぐに寄ってしまいそうですね。

 

△6二銀が疑問で替えて△4二玉などで一局の将棋にはなると思います。

 

さて、22手目の局面で△4二玉からの展開を見ていきましょう。

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この局面で▲3七桂も悪くないのですが、先手がもう少し欲張った指し方を見ていきます。それが▲3八銀です。(2016年8/8 叡王戦五段戦決勝佐々木勇-八代戦)

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28角と打ち込む手が見えるぞ!ということで△8八角成▲同銀△3三桂▲7七桂△2八角▲3七角△同角成▲同桂△2八角と進みました。

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この局面で香損しそうだが、歩得&手得していて先手がやれそうだと佐々木勇気棋士niconico動画の自戦解説のときに言っていたと思います。

 

ということで、△2八角と打ち込む以外の後手の攻め方を考える必要がありそうです。

その例を次に見ていきます。(2016年12/25 王位戦佐々木勇-中村太戦)

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87歩としないのなら86歩と垂らしていく攻めがシンプルながら有力かもしれません。以降の実戦でもさまざまな形で86歩からの攻めが出てきています。

この△8六歩には▲8五歩と受けるのが大切なところです。

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以降陣形整備を進め(△4二玉▲3八銀△6二銀▲3七桂)△6四歩に▲2四歩から攻め込んだ先手がリードを奪っていったようです。

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早めに△8六歩と垂らしてもあまり響かないようだったので、後手が堅く囲う展開が現れました。(2017年2/24 王位戦佐々木勇-豊島戦)

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(21手目▲3五飛まで)から

△4一玉▲3八銀△6二銀▲3七桂△5一金と進み、後手は中原囲いに組みました。

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(26手目△5一金まで)

ここで先手の指し手がいくつかあるようで、この対局で佐々木勇気棋士の選択は▲4六歩でした。この▲4六歩にどのような意味合いがあるのかはよくわかっていないのですが、次の▲2五飛~▲2三歩の攻めが厳しく先手が一気に攻め込むことができたようでした。

▲4六歩以下の指し手△5四歩▲2五飛△8六歩▲2三歩△同銀▲8三歩△同飛▲3三角成△同桂▲2三飛成△同金▲5六角

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56角の両取りが厳しく、以下先手がリードを手放さず勝ち切ったように見えました。

 

27手目に▲4六歩を入れずに▲2五飛も指されています。(2017年7/5 王座戦斎藤-稲葉戦)

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(26手目△5一金まで)から

▲2五飛△8六歩▲8五歩△7四歩まで

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(30手目△7四歩まで)

ここで斎藤慎太郎七段の▲7七金がすごい手だなぁと思いました。

以降機を見て86金と7,8筋を丁寧に守り、3筋からの攻め合いの展開となったため、後手の42玉が戦場に近く、先手の68玉が戦場から遠く、先手が非常に戦いやすそうな展開と言えると思います。

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(46手目△3六歩まで)

 

これまで見てきたように、21手目に3五飛を選択した場合、後手は中原囲いに組み、△8六歩などから反撃を狙う展開になりそうです。

 

21手目に3七桂を選択した場合、角交換から△3三銀の変化を後手に選ばれると

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この局面までは一直線でしたね。

この局面を深く研究するか、

21手目に▲3五飛を選択して、後手に堅く囲われても、十分で確実な攻めを狙う展開にするか、

のどちらがやれそうかを自分で判断して21手目を選択すると良いのかなーと思います。

 

今回はここまでとしたいと思います。

プロの棋譜の公開に関して日本将棋連盟では慎重な態度をとっているようですので、私のブログでは棋士棋譜を全て紹介する、ということは行わない方針です。

しかし、今回紹介した対局の棋譜やこれまで公開した対局の棋譜は攻め筋など大変勉強になる部分が数多くあるように感じています。

この記事で興味を持たれましたら、棋戦ごとに棋譜を公開してあるものもありますので、検索して棋譜を並べてみられることをお勧めします。

 

次回は▲3八銀に、△2七歩と形を乱しに来る手が来た場合の変化を見ていきます。

横歩取り勇気流~22銀82飛型④(38銀に△27歩) - 将棋序盤好きの小言