将棋序盤好きの小言

将棋の定跡や自戦感想戦を載せます。

横歩取り勇気流~22銀82飛型⑤(角交換から44角)

どうも、タネタです。

前回の9/13投稿記事で22銀82飛型をいったん終わりにしようと思っていたのですが
さっそく9/14に22銀82飛型で新しい形を見かけたので、

すこしだけ、その変化を見ていきます。

実戦は2017年9月14日順位戦C級2組4回戦石田直裕五段-三枚堂達也五段戦です。

22銀82飛型で、先手が35飛~38銀と立ったところまではよくある進行です。

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(23手目3八銀まで)

 

細かい違いとしては、私の記事では後手の42玉型と41玉型について、あまり区別せずに見てきましたが、

後手が速攻を狙っている場合には、42玉型が多いですね。

一方、後手が堅く囲う(中原囲いを目指す)場合には41玉型が多いです。

 

さて、ここで、後手が8八角成~4四角と飛車取りと88地点での2枚替えを狙ってきます。

(手順:24手目△8八角成▲同銀△4四角まで)

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(26手目4四角まで)

 

前回の記事でも似たような筋を少しだけ紹介しましたが、

実戦ではここで▲6六角と角を打ちました。

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(27手目6六角まで)

 

ここで△3五角も△6六同角もあるところだと思いますが、

実戦例では△6六同角と進行しました。

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(28手目6六同角まで)

 

以下、▲6六同歩△3三桂▲7七桂△7二銀▲2四歩と進みました。

この▲2四歩がどれほどの手なのか、イマイチよくわかっていないのですが

露骨に2三角と打ち込んで金か銀と交換しに行ったり、23歩成の筋から33地点を薄くしたりする筋など、厳しい攻め筋を見た手なのかと思っています。

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(33手目▲2四歩まで)

このあたりから、先手は3七桂~4五桂や6五桂などと、中央に桂馬を活用していく手を攻めの軸に、それを厳しくする味付けをどれだけ重ねられるか、が考え所なのかと思っています。

 

先手の▲2四歩から△8四飛▲3七桂△2七歩と進みました。

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(36手目2七歩まで)

△8四飛は次に24の歩を取ってしまおうという狙いなのかと思ったのですが、

すぐに2四飛としますと、▲8二歩で桂馬が取られてしまいますし、△2八飛成と攻め合っても、▲8一歩成~▲3四桂が厳しい攻めなので、先手が攻めて行けそうです。

▲3四桂を防ぐ△3四歩は格言通りの手で飛車取りにもなるのですが、

▲8五飛と手順に攻められてしまいますので、やはり先手の攻めが厳しそうです。

 

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(36手目を△2四飛とした場合)

36手目△2七歩を替えて△2四飛として場合の手順例:

①▲8二歩△2八飛成▲8一歩成△2七角▲3四桂

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(41手目3四桂まで)

②:▲8二歩△3四歩▲8五飛△2八飛成▲8一歩成△2七角▲2九歩!(好手)

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(43手目2九歩まで)

などの進行がありそうです。

△2七角に替えて気の利いた攻めがあれば良いのですが・・・

私程度の棋力では見えてないです。。。

 

実戦では△2四飛と歩を払うことなく、△2七歩として攻め合いに出ました。

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(再掲36手目2七歩まで)

 

△2七歩以下、実戦ではいよいよ先手の桂馬が攻めに活躍していきます。

▲2五桂△2八歩成▲3三桂成△同銀▲4五桂△3四銀▲5三桂成

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(43手目5三桂成まで)

技巧2で検討したところによれば、この▲5三桂成の感触が良くないようです。

替えて▲6五桂と中央に足していき、

△3五銀(他の手もあり得る)▲5三桂左成△5一玉▲2三歩成(△同金は▲4二角以下後手玉相当危ない)△4四銀▲3二と△8六角▲7七銀(△5三銀は▲8六銀が▲4二角以下に詰めろ)△5三角▲同桂成△同銀▲7五角△8九飛成▲5三角成

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(57手目5三角成まで)

と一直線に進んだ場合、△6九飛から王手が相当続くものの先手玉に詰みはなく、後手玉は受けが難しそう(読み切れてはいないですが)ので、先手やれそうです。

この変化の途中で後手に変化を見つけるか、43手目▲6五桂への応手△3五銀を替えるかが必要になりそうです。

 

実戦では43手目▲5三桂成以降

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(再掲43手目5三桂成まで)

先手後手ともに厳しく攻め合いますが、三枚堂五段のTwitterにもありましたように、

58手目▲5九角△7九玉▲8七桂で先手玉は捕らえられてしまいました。

 

おそらく本譜を下敷きに先手後手の改善策がプロの公式戦で現れる日がいつか来ることを願って、本記事は終わりにします。

最後になりますが、本記事で取り上げた実戦は名人戦棋譜速報サイトにて有料会員登録をすることで閲覧可能です。

43手目以降の手順が気になる方はそちらでご確認くださるようお願い申し上げます。

横歩取り勇気流~22銀82飛型④(38銀に△27歩)

どうも、タネタです。

横歩取り勇気流の序盤を勉強していく記事です。

前回までで、

勇気流に対し後手が2二銀・8二飛型に構える展開では

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(20手目△8二飛まで)

21手目に①3五飛か②3七桂のどちらも有力そう、という内容を見ていきました。

今回は3八銀とたった形に対して△2七歩と形を乱しに来る手について取り上げます。

 

プロの実戦では2017年1月14日朝日杯行方-佐藤天戦を見ていきます。

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(24手目△2七歩まで)

21手目▲3五飛以降、△4二玉▲3八銀△2七歩と進んで画像の局面です。

ここで本譜の進行は自然に▲2七同銀です。

そこから1九の香車が受からない展開まで直線的な進行です。

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(32手目△2八角まで)

手順:▲2七同銀△8八角成▲同銀△2八角▲3七角△同角成▲同桂△2八角

ここから▲4五桂△1九角成▲8三歩と進みました。

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この叩きの歩が良い手で、△8三同飛だと守りに効いていた飛車の横効きが消えるので、

▲5三桂成から▲3二飛成を狙って先手の攻めが決まってしまいそうです。

従いまして、本譜は△9二飛としましたが、▲7七桂として2枚の桂馬が攻めに活用できそうで先手が気分よく攻めていける展開と言えそうです。

 

これ以外の△2七歩の反撃の筋を実戦譜からは見つけられなかったのですが、

もう少し別のパターンの反撃についても見ていきます。

一つ目は、△2七歩▲同銀△8八角成▲同銀△4四角です。

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(28手目△4四角まで)

前にも一度出てきました、88地点での2枚替えと35の飛車取りの両狙いを受けることはできません。

この局面で先手の対策の手が広く、私の棋力ではどれが最良か判断できないのですが、

A. 7七角(同角成同桂で桂馬が跳ねられる&77角のラインを活かして35歩~34歩と攻める)

 

B. 6六角(同角なら同歩で88の2枚替えが緩和される、77角よりも84歩と抑える手がある分はたらきが良い)

 

C. 8三歩同飛を入れてから66角or77角(飛車の横効きを消して、84歩と先手で飛車先を止めることもできる)

 

などいくつか有力そうな変化がありそうです。

この3つの変化の検討は、しばらく先の記事ですが、

角交換から3三金の変化で行う予定です。

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(22手目△3三金まで)

 

もう一つの変化として△2八歩を見ていきます。

(手順は△2七歩▲同銀△2八歩)

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(26手目△2八歩)

後手は歩切れになりますがと金はできそうです。

以降、3七桂と逃げておいて、△8八角成▲同銀△2九歩成に▲7七角(または6六角)と打っておいて、先手がやれそうかもです。

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(31手目▲7七角まで)

先手の狙いとしては、▲2二角成△同金▲3一銀という攻めがありますので、

次に8三歩と叩いていく手もあるかもしれません。

例として、画像局面から△1九と▲8三歩として、後手の飛車の働きを悪くできます。

また、画像局面から△2八と、と銀取りを見せる手も考えられるところではありますが、

これは▲4五桂と跳ねていく筋が迫力満点で先手好調のようです。

▲4五桂△2七との進行は

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▲2二角成△同金▲3一銀で

i)△4一玉は▲5三桂不成

ii)△5一玉は▲2二銀不成(or成どちらでも可?)~▲3一飛成

が厳しく先手優勢です。

2七とを替えて▲4五桂に△4四角と受ける手はありますが、

ここでも▲8三歩が間に合います。(同飛は44角同歩53桂成)

やはり飛車は横に逃げるしかありませんが、

▲2六銀といったん銀を逃げつつ△3五角に同銀を用意して

45の桂馬が安定します。

また飛車を52に逃げますと、▲4四角△同歩▲1六角という手もあるようです。

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(39手目▲1六角まで)

進行の例として

ア) △4五歩▲5二角成△同金▲6一飛

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(43手目▲6一飛まで)

次の71の銀取りと21の桂取りが受からない。

イ) △4二角▲5二角成△同玉2四飛

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(43手目▲2四飛まで)

次に44の歩を外されるとたまったものではないが、▲3二飛成△同角▲2二飛成は大事件。

ということで、26手目△2八歩~2九歩成の攻めは

先手の77(or66)の角のラインと45桂の攻撃力が高く、先手も十分やれそうな感じです。

 

1九とや2八とでは乱暴すぎるということで、

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(再掲31手目▲7七角(or6六角)まで)

から△3三桂などとして▲2二角成からの攻めを緩和するのも考えられる進行ですが、

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(32手目△3三桂まで)

シンプルに▲4五桂と跳ねていき、

a) △同桂▲同飛では▲3四桂が厳しいのでやはり先手が攻めに困ることは無さそうです。

かといって▲4五桂に

b) △1九となどと悠長なことをしていると▲2三歩がきびしい攻めで△同銀なら▲3三桂成から突破されてしまいますので、

△2三同金と取りますが続いて▲2四歩が継続した攻めで

同金などでは33の地点から突破されてしまいます。△3四歩などとしても▲2三歩成から▲3三とが厳しく飛車を取る暇がありません。

 

以上見てきましたように、先手の38銀49金型を△27歩から乱そうとする手に対しては

機を見て37桂~45桂と跳ねだしていく手が迫力のある攻めで

先手が攻勢をとれそうな変化が多そうです。

角交換から44角として飛車角交換を挑む展開は、後手にとって有力そうな変化ですが

その詳細については、また別の(けっこう後の方の)記事で取り上げていきたいと思っています。

本日の記事は以上です。

今回の変化では、私が将棋ソフト「技巧2」を使用して分岐を見ていきましたので

他に気になる変化がいくつか見られたかもしれません。

「これで先手困ってないの?」「後手にこんな良い手があるよ!」「先手にもっと面白い筋がある!」などのご意見がございましたら、コメントくださるとありがたいです。

 

追加。。。

当初の予定と棋譜の進行が変わりました。

そっと、前回までの記事のコメントも全て替えました。もし、ご期待されていた内容と違っているようでしたら申し訳ないです。

横歩取り勇気流~22銀82飛型③(21手目35飛)

どうも、タネタです。

横歩取り勇気流の序盤をプロの棋譜から勉強していく記事です。

 

前回の記事では

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この局面で▲3七桂と跳ねる手を見ていきました。

 

今回の記事ではプロの実戦例が最も多い▲3五飛の変化を見ていきます。

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(21手目35飛まで)

この局面で後手の自然な手は△4一玉または△4二玉です。

それ以外の手では▲3七桂~▲4五桂と跳ねてくる手が厳しくなります。

先手の飛車が3筋にいる場合、32の金に紐がついている形でなければ、先手は桂馬を跳ねるだけで快調に攻めることができてしまいます。

また、この局面で△2三銀と金銀の連結をよくする手もすぐ悪くなる手ではないのですが、33の地点が薄くなってしまうので、場合によっては先手が一気に攻めることができるかもしれません。

攻めの例として▲3五飛△2三銀のあと、▲3七桂△6二銀(悪手)などとすると、▲8四歩△同飛▲3三角成△同桂▲6六角として

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以下△8九飛成と飛車取りを逃げると▲3三角成の攻めが厳しく△6二銀の形が壁になっていて後手玉がすぐに寄ってしまいそうですね。

 

△6二銀が疑問で替えて△4二玉などで一局の将棋にはなると思います。

 

さて、22手目の局面で△4二玉からの展開を見ていきましょう。

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この局面で▲3七桂も悪くないのですが、先手がもう少し欲張った指し方を見ていきます。それが▲3八銀です。(2016年8/8 叡王戦五段戦決勝佐々木勇-八代戦)

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28角と打ち込む手が見えるぞ!ということで△8八角成▲同銀△3三桂▲7七桂△2八角▲3七角△同角成▲同桂△2八角と進みました。

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この局面で香損しそうだが、歩得&手得していて先手がやれそうだと佐々木勇気棋士niconico動画の自戦解説のときに言っていたと思います。

 

ということで、△2八角と打ち込む以外の後手の攻め方を考える必要がありそうです。

その例を次に見ていきます。(2016年12/25 王位戦佐々木勇-中村太戦)

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87歩としないのなら86歩と垂らしていく攻めがシンプルながら有力かもしれません。以降の実戦でもさまざまな形で86歩からの攻めが出てきています。

この△8六歩には▲8五歩と受けるのが大切なところです。

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以降陣形整備を進め(△4二玉▲3八銀△6二銀▲3七桂)△6四歩に▲2四歩から攻め込んだ先手がリードを奪っていったようです。

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早めに△8六歩と垂らしてもあまり響かないようだったので、後手が堅く囲う展開が現れました。(2017年2/24 王位戦佐々木勇-豊島戦)

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(21手目▲3五飛まで)から

△4一玉▲3八銀△6二銀▲3七桂△5一金と進み、後手は中原囲いに組みました。

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(26手目△5一金まで)

ここで先手の指し手がいくつかあるようで、この対局で佐々木勇気棋士の選択は▲4六歩でした。この▲4六歩にどのような意味合いがあるのかはよくわかっていないのですが、次の▲2五飛~▲2三歩の攻めが厳しく先手が一気に攻め込むことができたようでした。

▲4六歩以下の指し手△5四歩▲2五飛△8六歩▲2三歩△同銀▲8三歩△同飛▲3三角成△同桂▲2三飛成△同金▲5六角

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56角の両取りが厳しく、以下先手がリードを手放さず勝ち切ったように見えました。

 

27手目に▲4六歩を入れずに▲2五飛も指されています。(2017年7/5 王座戦斎藤-稲葉戦)

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(26手目△5一金まで)から

▲2五飛△8六歩▲8五歩△7四歩まで

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(30手目△7四歩まで)

ここで斎藤慎太郎七段の▲7七金がすごい手だなぁと思いました。

以降機を見て86金と7,8筋を丁寧に守り、3筋からの攻め合いの展開となったため、後手の42玉が戦場に近く、先手の68玉が戦場から遠く、先手が非常に戦いやすそうな展開と言えると思います。

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(46手目△3六歩まで)

 

これまで見てきたように、21手目に3五飛を選択した場合、後手は中原囲いに組み、△8六歩などから反撃を狙う展開になりそうです。

 

21手目に3七桂を選択した場合、角交換から△3三銀の変化を後手に選ばれると

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この局面までは一直線でしたね。

この局面を深く研究するか、

21手目に▲3五飛を選択して、後手に堅く囲われても、十分で確実な攻めを狙う展開にするか、

のどちらがやれそうかを自分で判断して21手目を選択すると良いのかなーと思います。

 

今回はここまでとしたいと思います。

プロの棋譜の公開に関して日本将棋連盟では慎重な態度をとっているようですので、私のブログでは棋士棋譜を全て紹介する、ということは行わない方針です。

しかし、今回紹介した対局の棋譜やこれまで公開した対局の棋譜は攻め筋など大変勉強になる部分が数多くあるように感じています。

この記事で興味を持たれましたら、棋戦ごとに棋譜を公開してあるものもありますので、検索して棋譜を並べてみられることをお勧めします。

 

次回は▲3八銀に、△2七歩と形を乱しに来る手が来た場合の変化を見ていきます。

横歩取り勇気流~22銀82飛型④(38銀に△27歩) - 将棋序盤好きの小言

 

横歩取り勇気流~22銀82飛型②(21手目37桂)

どうも、タネタです。

勇気流の序盤をプロの棋譜から勉強する記事です。

今回の記事から局面への評価として「気分良し」と抽象的な表現を使用しますが、形勢に差があるほどではない程度の評価のつもりです。

 

前回の記事では

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この局面で先手の指し手が3通りあるかな、という話をしました。

実戦で最も多いのは①▲3五飛ですが、3五飛以外の手では何か嫌なところがあるのでしょうか?

というところを今回の話題にします。

1つ目の実戦例では2015年12/8の第74期順位戦C級1組7回戦 大平武洋五段(当時)-佐々木勇気五段(当時)を見ていきます。

上の局面から▲3七桂(21手目候補手②ですね。)△8八角成▲同銀△3三銀▲3五飛△4四角と進みました。

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(26手目44角まで)

さてこの局面、88の地点での2枚替えと、35角からの飛車角交換の両狙いになっています。

88の地点での2枚替えを許すわけにはいかないので、飛車角交換は甘受するしかありませんね。

形勢は互角なのだと思いますが、序盤で飛車角交換を避けられないのは先手として少し気分が悪いですかね。(序盤は飛車より角とはいえ、私は飛車を取られたくありません。。。)

 

ですので、もうすこし気分の良い展開にならないと困ってしまいますね。

別の実戦で先手の改善策が登場しました。

その改善策が

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(再掲20手目局面)

▲3七桂△8八角成▲同銀△3三銀に▲8三歩!です。

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(25手目83歩まで)

飛車取りを逃げないなんてドキドキしてしまいますね。

 

局面図以下△8三同飛▲8四歩△8二飛▲3五飛△8四飛▲7五角と進みました。

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(31手目75角まで)

相手に歩を2枚も渡してしまいましたが、次の53角成が受からず(54飛は45桂で銀桂交換になり先手気分良し)先手がやれそうな展開みたいです。

実戦はここから

△2四飛(2016年10/7王将戦羽生-深浦戦)と

△8二飛(2017年5/26,27名人戦佐藤天-稲葉戦)の

2例があるようですが、どちらも先手が勝っています。

この変化で後手自信無しなら、8八角成からの順を自重するのかもしれませんが、

それなら45桂と跳ねだしていく攻めなど先手の楽しみが多そうな展開だと思われます。

 

ここまでの内容をいったんまとめます。

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21手目に②▲3七桂を選択する場合、

△8八角成~△3三銀と飛車を取りに来る順がやや気になりますが、

▲8三歩~▲8四歩と飛車をたたいてから▲3五飛と逃げ、△8四飛に▲7五角で先手やれるのではないか、ということでした。

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この局面からの変化に自信がある場合には21手目に②▲3七桂と跳ねる手も悪くなさそうです。

この先の記事で21手目①3五飛からの変化を考える場合には、この局面と比較しようと思います。

横歩取り勇気流~22銀82飛型③(21手目35飛) - 将棋序盤好きの小言

 

横歩取り勇気流~22銀82飛型①(21手目の候補手)

どうも、タネタです。

横歩取り勇気流のプロ実戦譜から定跡を勉強していく記事です。

気になる変化などありましたら具体的な指し手を添えてコメントいただけますと幸いです。

 

今回は前回の記事から

横歩取り勇気流~後手の主な対策(分岐元の形) - 将棋序盤好きの小言

で紹介した勇気流への後手の対策③22銀82飛型の変化を見ていきます。

この形が実戦例が最も多いため最初にこの変化から見ていきます。

(最初に取り上げるのに③なの?と紛らわしくてすみません)

 

横歩取り勇気流22銀82飛型の基本図は以下の局面です。

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(20手目△8二飛まで)

この局面で①▲3五飛が最近よく指されている形です。

 

通常の横歩取りでは先手が36飛~26飛と戻って、後手の飛車が85または84に移動したときには▲8七歩として手堅く8筋を守っておくのが大切な手です。

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横歩取りは先手の歩得・後手の手得と双方に主張のある展開が普通です。

勇気流では36飛~26飛と飛車に2手かけることや87歩と8筋を丁寧に守る手を省略してどんどん攻める形を作っていこう!というのが狙いになります。

そのため勇気流を選んだからには、21手目に▲8七歩は考えないことにします。

では21手目の▲3五飛以外の候補手は?というと、

②▲3七桂が実戦で指されています。

 

 

これから何回かに分けて、この21手目の局面から生じる分岐を先手の目線で比較検討していきます。

また、先手が▲3八銀と立った時に△2七歩として形を乱しに来る反撃も

実戦例は少ないですがあるようです。この筋についても後に取り上げる予定です。

 

次の記事では21手目に②37桂を選んだ場合を見ていきます。

横歩取り勇気流~22銀82飛型②(21手目37桂) - 将棋序盤好きの小言

横歩取り勇気流~後手の主な対策(分岐元の形)

どうも、タネタです。

最近、プロ間でも流行している横歩取り勇気流の序盤について、記事を書いていきます。

この記事では、横歩取り勇気流の基本局面図

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(勇気流基本図(17手目▲6八玉まで))

から、後手の対策としてプロ棋士の実戦でよく採用されている形を4つ紹介します。

①18手目76飛

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実戦例

2017年2/1 第75期順位戦A級 行方尚史八段-広瀬章人八段

2017年8/6 第43期棋王戦挑決トーナメント 及川拓馬六段-羽生善治三冠

 

②85飛~25飛型

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(基本図から18手目△8五飛まで)

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(上図から▲3六歩△2五飛▲2八歩△8五飛まで)

実戦例

2016年1/15 第29期竜王戦1組ランキング戦 稲葉陽七段(当時)-三浦弘行九段

2016年11/18 第65期王座戦1次予選 佐々木勇気五段(当時)-中座真七段

2017年7/24 第76期順位戦B級1組 谷川浩司九段-斎藤慎太郎七段

2017年7/31 第30期竜王戦挑決トーナメント 羽生善治三冠-稲葉陽八段

など多数。

 

③22銀82飛型

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(勇気流基本図から18手目△2二銀▲3六歩△8二飛まで)

実戦例

2015年12/8 第74期順位戦C級1組 大平武洋五段(当時)-佐々木勇気五段(当時)

2016年8/8 第2期叡王戦段位別予選五段戦決勝 佐々木勇気五段(当時)-八代弥五段(当時)

2016年12/26 第58期王位戦予選 佐々木勇気五段(当時)-中村太一六段

2017年7/5 第65期王座戦挑決トーナメント 斎藤慎太郎七段-稲葉陽八段

など多数

 

④52玉76飛型

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(勇気流基本図から18手目△5二玉▲3六歩△7六飛)

2017年7/14 第30期竜王戦挑決トーナメント 羽生善治三冠-村山慈明七段

2017年7/19 第76期順位戦A級 広瀬章人八段-稲葉陽八段

2017年8/11 第67期王将戦二次予選 松尾歩八段-阿久津主税八段

 

以上の4つの形が、プロでよく指されている勇気流対策です。

これ以外にもいくつか似た形などで指されているものもあるのですが、

そちらはまたプロの棋譜がいくつか集まったら記事に追加する予定です。

 

今後の記事では上で紹介した4つの形を、いくつかの実戦譜を参考に序盤の方針や作戦、変化や分岐を検討していきたいと思います。

横歩取り勇気流(序盤検討)~端書

どうも、タネタです。

将棋ウォーズでは1級、24では低級タブで指している級位者ですが

横歩取りの勇気流の定跡を勉強しようと志し、

プロの実戦譜をいくつか取り上げて、

先手(勇気流を採用する)目線で有力そうな変化を

プロの実戦譜からまとめられればと思い、記事を書いています。

 

棋力が伴わず、物足りなく思う面があるかもしれませんが、

その場合には具体的な指し手を付けてコメントをいただけるとありがたいです。

以降長いこと記事をつなげて書くことになると思いますが

お付き合いいただけますと嬉しいです。

 

本日、第一回の記事では、勇気流の基本図とそこに至るまでの大まかな変化をご紹介します。

各変化の詳細につきましては「将棋・序盤のstrategy」様など他のブログや棋書、動画を参考されることをお勧めいたしますm(_ _)m

 

今回は先手が横歩取りを志向する順を紹介していきます。

横歩取りは、相居飛車の戦型ですので、自分(先手)と相手(後手)が互いに居飛車を選んだ場合にのみ成立します。

さらに、細かいことを言うと横歩取りは先手には選択の権利の無い戦型です。

居飛車の戦型は、主に5つあります。

相掛かり、矢倉、角換わり、横歩取り、(後手)一手損角換わりの5つです。

小難しい話が続きそうですので、戦型の選択権についてはniconico動画の説明に詳しいところをお願いすることにします。↓niconico動画のリンクです。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm25226270?ref=search_key_video&ss_pos=3&ss_id=f38372a8-16b4-4b98-8b76-9dd2f3a02473

動画の前半にも説明がありますが、横歩取りと一手損角換わりは、後手に選択権のある戦型となります。

従いまして、この記事を読んで横歩取りを指そうと思った方には、一手損角換わりについても、別の知識が必要になりますことを知っておいてください。

早く強くなりたい級位者の方は横歩取りを避ける方が多いと思います。筆者は横歩取りを避けることについて悪いことだとは思っておりません。「横歩取りは研究が重要で、序盤から悪くなるような変化(ハメ手)に誘導されそう」などの忌避感をお持ちの方も多いと思います。

しかし、早くから大駒が駒台に乗り、捨て駒からの寄せや攻防手などの派手な手が出やすいのも横歩取りの魅力だと筆者は考えています。

この記事が、指す将の方(私のように級位者も含み)はもちろん、見る将の方にも、横歩取り勇気流の面白い将棋を体感できる一助となれれば幸いです。

 

さて前書きが長くなりましたが、勇気流の基本図までの指し手を見ていきましょう。

初手及び3手目の▲2六歩・▲7六歩のどちらが先でも問題はありません。

▲2六歩では、相掛かり・横歩取り・一手損角換わり・対振り飛車

▲7六歩では、角換わり・横歩取り・一手損角換わり・対振り飛車が多い展開ですね。

お互いに居飛車党で飛車先の歩を突くことを保留しない人たちの対局では先手が76歩・26歩、後手が84歩・34歩を突いて

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この盤面まで進むことと思います。(体感この局面まで進む確率は30%ほど…)

以降、▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金まで進むと、横歩取りになる可能性がかなり高くなります!

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(途中▲7八金や△3二金は大事な手なのですが、細かい説明は省きます。

▲7八金を省いて▲2四歩については「七手爆弾」(互角)niconico動画(アニメコラボの将棋動画のため、アニメなどに忌避感のある方は七手爆弾で検索いただければ十分かと思います。)

http://www.nicovideo.jp/watch/sm28834222 5:00~

△3二金を省いて△8六歩についてはniconico動画

【実況解説】横歩を取れるようになる動画part1【基本図まで】9:08~

http://www.nicovideo.jp/watch/sm24725516?ref=search_key_video&ss_pos=5&ss_id=33ab559f-e39e-4532-b67d-c67a5b1b9911を見て詳しい解説があります。)

上記図から▲2四歩△同歩▲同飛

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ここで定跡どおりの進行は△8六歩ですが、

△2三歩の「△2三歩戦法」も有名な変化ですね。

(やはり詳しい変化はniconico動画にて

【実況解説】横歩を取れるようになる動画part1【基本図まで】13:23~

http://www.nicovideo.jp/watch/sm24725516

を参照くださいまし)

 

定跡通り△8四歩▲同歩△同飛▲3四飛と進めば

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この局面にたどり着けると思います。

この局面から①△3三角であれば勇気流にたどり着きます(ヤッター)

②△8八角成であれば、

②-i、「4五角戦法」(▲同銀△2八歩▲同銀△4五角)

②-ii、「相横歩取り」(▲同銀△7六飛)

②-iii、「4四角戦法」(▲同銀(△3八歩▲同銀)△4四角)

②-IV、「3三角戦法」(▲同銀(△3八歩▲同銀)△3三角)

などの変化があり得ます。②の変化については、相横歩取り以外の3つ(4五角戦法、4四角戦法、3三角戦法)は横歩取り超急戦と呼ばれ、激しい戦いとなりますので、一定の知識は必要になります。

このあたりの超急戦の変化についてはネット上でいくつも定跡が掲載されていますので、そちらで確認くださいませ。

 

これら多くの変化がある中で、①△3三角として「横歩取り3三角型空中戦法」

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の局面図になり、そこで先手が▲6八玉と構えるのが

最近流行しています「横歩取り勇気流」の局面となります。

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(横歩取り勇気流基本図)

 

勇気流にたどり着くまでの有力な変化は、他のブログや動画に任せた部分が多くありますが、それらを越えて、この基本図までたどり着いて以降の変化を今後のブログにてまとめて行く予定です。

筆者は級位者でまだまだ棋力が足りておりませんので、有力な変化を飛ばしてしまう可能性も考えられます。

お気づきの点は具体的な指し手を添えて指摘いただけますと、今後反映することができますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 

最後に先手が勇気流にたどり着くまでの先手が抑えておくべき(後手に選択権のある)変化をまとめます。

・一手損角換わり

(相掛かりor角換わり)

・△2三歩戦法

・相横歩取り

横歩取り超急戦(4五角・4四角・3三角)